みなさん、こんにちは。
絵本ソムリエのニコパパです。
今日は、絵本『アンジュール ある犬の物語』のご紹介です。
車から投げ捨てられた1匹の犬のお話。
鉛筆のみで描かれた、文字のない絵本です。
デッサンの粗い線だからこそ感じられる躍動。
文字がないからこそ、心に強く訴えかけるストーリー。
シンプルなモノクロの絵から、音やにおいが伝わってくるような作品。
そして犬の心情までも見事に描いた、胸を打つ1冊です。
絵本『アンジュール ある犬の物語』の情報
著者:ガブリエル・バンサン/作
出版社:BL出版
出版年:1986年5月
ページ数:63ページ
対象年齢:小学校低学年から
『アンジュール ある犬の物語』のあらすじ
車から1匹の犬が放り出されてしまいます。
そのまま走りさっていく車。
犬は必死に車を追いかけ走ります。
だけど車は止まることなく過ぎ去っていく……
どんなに追いかけても距離は離れていくばかり。
そしてとうとう車は見えなくなった……
それでも犬は、においをたどり、ひたすら車を探します。
すると、犬が道路へ飛びだしたことで車同士が衝突し、大事故に。
犬はそれを振り返りながらも歩きつづけます。
ついに立ち止まり、途方に暮れる犬……
空に向かって遠吠えをします。
うなだれてさまよい歩き、そして犬は、ある町にたどり着きます。
そこで、ひとりの子どもと出会うのです……
絵本『アンジュール ある犬の物語』の内容と感想
ある日、車から投げ捨てられてしまった1匹の犬の物語。
全編をとおして文字がなく、鉛筆デッサンのみで描かれた絵本です。
まるでパラパラ漫画のように進むストーリー。
そのシンプルな作品ながら、心に訴えかける魅力のある1冊です。
振り向き、切ない表情でこちらを見つめる犬が描かれた表紙。
デッサンの粗い線だからこそ、引き込まれる力強さがありますね。
アンジュールが空に向かって吠えるシーンは、胸がギュッと苦しくなります。
言葉がなくても、いや、言葉がないからこそ思いが伝わるのかもしれませんね。
作中ではっきりとは描かれませんが、最後は新しい飼い主と出会えたのかな……
もう放さないであげてほしいな。
だって、この犬には幸せになってほしいもんね。
動物を飼うということ、命を背負うということ。
そんなメッセージを突きつけられるような、考えさせられる作品です。
ちなみに、タイトルの「アンジュール」って、犬の名前だと勘違いしちゃいそうですよね。
原題『UN JOUR, UN CHIEN』は、日本語に訳すと「ある日、ある犬が」という意味なんだそう。
なので「アンジュール」は犬のことではなくて、犬の名前もわからないんです。
読み聞かせでは自分で名付けて、好きな名前で呼んであげてもいいかもしれませんね。
モノクロの絵で、そこに広がる情景や犬の気持ちまでも見事に描いた1冊です。
受賞歴
- 日本図書館協会選定図書
- 全国学校図書館協議会選定図書
- 第34回 産経児童出版文化賞美術賞受賞
捨てないで 投げださないで
絵本の犬は運良く新しい飼い主と出会えてよかったよね。
でもね、人間のエゴで捨てられるペットは世の中にたくさんいる。
保健所などで、1年間に殺処分される犬の数は1万びき以上だそうです。
こんなにも多い理由、それは犬を捨てる飼い主がいるから。
「子どもが生まれて飼いきれなくなった」
「年老いて犬の世話をするのが大変だから」
いろんな理由で捨てられる犬たち。
なかには飽きたオモチャを捨てるみたいに、無責任に放りだす人もいるみたいで……
だけどどんな事情があるにしろ、捨てていい理由にはならないよね。
人間もペットも同じ命。
軽んじられていいはずがないんだよ。
命の重さに違いなんてないんだから。
みんなが一緒に暮らしていくために必要なのは、共感と想像力なんじゃないのかな。
ぼくたちは毎日を必死に生きている。
それと同じように犬も猫も、すべての生き物が懸命に生きているんだからさ。
絵本の犬をみればわかるはず。
表紙に描かれるような悲しい姿を、現実にしたくはないもんね。
以上、力強く心に訴えかける名作 文字のない絵本『アンジュール ある犬の物語』のご紹介でした。
おしまい。
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