出典:ジョン・クラッセン『みつけてん』/クレヨンハウス
みなさん、こんにちは。
絵本ソムリエのニコパパです。
今日は、絵本『みつけてん』のご紹介です。
人気絵本『どこいったん』『ちがうねん』に続く、ジョン・クラッセンの帽子シリーズ3作め。
そして帽子をめぐる物語は、今回で完結です。
もちろんシュールな作風と、関西弁の翻訳は健在。
だけど前作までとはちょっぴり違う、不穏な空気……
2ひきのカメが主役の、クールな絵本をお楽しみください。
絵本『みつけてん』の情報
『みつけてん』のあらすじ
ふたりづれのカメが、帽子をみつけました。
ふたりで一緒にみつけた帽子です。
だけど、帽子はひとつだけ。
交互にかぶってみると、ふたりともとってもお似合い。
でも、どちらか一方だけしかかぶれません。
「ぼくら ふたりやのになぁ」
仕方なく、みつけなかったことにして置いていくことに。
だけど……だけど……とっても気になります。
日が暮れて夕日をながめていても、帽子のことで頭がいっぱい。
そして夜になり……
1ぴきのカメが、もう1ぴきが寝た頃合いを見計らって帽子に近づきます。
はたして、帽子をかぶることができるのでしょうか……?
絵本『みつけてん』の内容と感想
ジョン・クラッセンの帽子シリーズ第3作め。
そしてシリーズ完結作でもあります。
シュールな作風と関西弁の翻訳は今作も同じ。
そして最後にまたドキッとする結末が待っているのかとハラハラ……
だけど今回は前作までとちょっと違った展開です。
1作目の『どこいったん』では帽子を盗られ、2作目の『ちがうねん』では帽子を盗り。
そして3作目となる今回は、なんと帽子を……置いておきます……。
2ひきのカメが見つけた帽子。
1ぴきはそれほど帽子に固執してはいないようす。
だけどもう1ぴきは、かなり帽子にご執心。
そしてその気持ちを隠したまま。
抜け駆けして何とか帽子を手にできないものかと駆け引きしますが……
建前とは裏腹に、目線が本音を語っていますね。
仲よく帽子をかぶっている寝言を聞いて、ハッと我に返り帽子をあきらめます。
だけど見方によっては、この寝言も巧妙な作戦だったんじゃないのかと疑ってしまいたくなります。
結局、帽子は置いていったのかな。
順番交代でかぶるという選択肢もあったような気がするんだけどね。
続編・シリーズ作品
【ジョン・クラッセンの帽子シリーズ】
- どこいったん(2011年11月)
- ちがうねん(2012年11月)
- みつけてん(2016年10月)
・結末の怖い展開にドキッとする 関西弁のシュールな絵本『どこいったん』
・スリル満点の追走劇 関西弁がみごとにマッチしたシュールな絵本『ちがうねん』
本音と建前と優先順位
数人での食事会。
しかもまだ気を使っているような間柄。
ひとつだけお皿に残った唐揚げ……
気になっているんだけど、気にならないふりをして。
最後のひとつを食べたいんだけど、言いだせなくて。
唐揚げはひとつだけ。
食べられるのはひとりだけ……
絵本『みつけてん』を読むと、そんな状況を想像してしまうのは、ぼくだけでしょうか……?
ぼくらのなかには本音と建前みたいなものがあって。
集団生活をするうえで必要なことでもあるんだけどね。
絵本のカメも、自分の欲求と相方との関係性を考えて
ほしい……いや、でも……ああ、やっぱりほしい……
そんな心の葛藤がうかがえて、みている分にはおもしろいんだけどさ。
こういうときって損得で考えたり、一時の誘惑に流されちゃうと、たいてい上手くいかないもんだよね。
二兎を追う者は一兎をも得ず。
人生は取捨選択の連続なんだから。
自分のなかの優先順位を考えること。
要は自分にとって本当に大切にしたいものは何かってことなんじゃないのかな。
以上、ひとつの帽子に2ひきのカメ 不穏な空気漂うクールな絵本『みつけてん』のご紹介でした。
おしまい。
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