出典:阿川 弘之,岡部 冬彦『きかんしゃやえもん』/岩波書店
みなさん、こんにちは。
絵本ソムリエのニコパパです。
今日は、絵本『きかんしゃやえもん』のご紹介です。
懐かしさを感じる、SL機関車が主人公。
擬人化された列車たちのお話です。
アニメ化もされ、国語の教科書にも載った人気作品。
昔も今も愛されつづける、ロングセラーの乗り物絵本です。
絵本『きかんしゃやえもん』の情報
『きかんしゃやえもん』のあらすじ
田舎の町の小さな機関庫に「やえもん」という機関車がおりました。
長いあいだ働いて、年をとって、くたびれていました。
同じくらい年寄りの小さな客車を引いて、駅から駅へ行ったり来たりの毎日です。
ある日、町の駅に着いたやえもん。
最新式のピカピカな、れえる・ばすや電気機関車と隣りあわせになります。
華やかな町で颯爽と走る彼らをみて、やえもんは汚い自分の姿が悲しくなりました。
「おなかの なかまで まっくろけの びんぼうぎしゃ」
やえもんがお昼のお弁当に石炭を食べていると、電気機関車がバカにします。
それをみていた、れえる・ばすも一緒になってからかいます。
やえもんは、まっ黒な煙をはいて怒りだしました。
「おれは いままで こんなに ながいあいだ はたらいてきたのに みんなで おれを ばかにする」
腹を立てたやえもんには、子どもたちの声もきこえません。
煙突から煙だけでなく、火の粉も吐きながら走りつづけたのです。
それが路脇の田んぼのわらに燃え移って、火事になってしまいます。
人々の怒りはおさまらず、問題になったやえもんは処分されてしまうことに……
絵本『きかんしゃやえもん』の内容と感想
岩波書店「岩波の子どもの本」のなかの1冊。
擬人化された列車たちのお話です。
さながら和製「きかんしゃトーマス」といったところでしょうか。
50年以上前に出版された絵本だけに、時代を感じさせる昭和のにおいがする1冊。
だけど古臭さは感じない、長く愛されている乗り物絵本です。
長いあいだ働いて年をとってしまったSL機関車のやえもん。
処分されてくず鉄になるはずが、ひょんな偶然から、交通博物館で保存されることが決まります。
ずっと頑張ってきたのに、古くなったからといってお払い箱にされてしまう。
そんなやえもんの姿は、大人が読んでも共感できるところがあるのではないでしょうか。
それでも「捨てる神あれば拾う神あり」ってなもんです。
やえもんの第2の人生は、きっと幸せがたくさん待っていますよね。
「おれだって しゃあ。わかい ころには しゃあ」
やえもんの「~しゃあ」などといった口ぐせも印象的な作品。
他にも「ぷっすん」や「けっとん」といった、特徴ある言いまわしはついマネしたくなりますね。
発行部数は139万部のミリオンセラー作品*1。
小学校の国語の教科書にも載った名作絵本。
NHKで複数回にわたり映像化されたり、「D51の大冒険」という名でアニメ化や3D映画化もされている人気の1冊です 。
古びても変わらない幸せ
古いものより新しいものの方がいい。
新しいもの、きれいなものの方が価値がある。
そんな風潮や価値観が、世の中には少なからずあるんじゃないのかな。
古くなったやえもんを、バカにしたいみたいな空気がさ。
でもね、その考えって少しさみしい気がするんだ。
時間は一方通行でしか流れていかないんだから。
形あるものは必ず古くなって、年老いていく。
物も人も、自然だってそう。
「若いころはよかった」
「あのころに戻りたいなあ」
そうやって願ったところで、叶うことはないんだから。
だんだん価値がなくなっていく。
少しずつダメな自分に近づいていく。
そんなふうに思いながら生きていくなんて悲しいだけだよね。
年を重ねることはさ、悪いことでもマイナスなんかでもないんだよ。
楽しいことも、幸せなことも、なくなりはしないんだから。
失っていくものもあるけどさ、増えていくものだってあるんだから。
やえもんみたいに、新しい人生がひらけるかもしれないんだしね。
以上、擬人化された列車たちの物語 ロングセラーの乗り物絵本『きかんしゃやえもん』のご紹介でした。
おしまい。
*1:トーハン「ミリオンぶっく2018年版」のデータを元に記載しています。
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