出典:佐々木 マキ『やっぱりおおかみ』/福音館書店
みなさん、こんにちは。
絵本ソムリエのニコパパです。
今日は、絵本『やっぱりおおかみ』のご紹介です。
ひとりぼっちのさみしさ。
自分と違う存在をうらやましく感じる気持ち。
いろんな思いがギュッとつまったロングセラー作品。
「ありのままの自分を受け入れよう」
そんなことを語りかけてくれるようなやさしい1冊です。
ちょっぴり切なくも示唆に富んだ物語。
読む人の心にじんわりと染みる素敵な絵本です。
絵本『やっぱりおおかみ』の情報
『やっぱりおおかみ』のあらすじ
1ぴきだけ生き残っていた子どものおおかみ。
ひとりぼっちがさみしくて、仲間を探して毎日ウロウロ。
「どこかに だれか いないかな」
うさぎ、やぎ、ぶた。
街にはたくさんの動物達がにぎやかに暮らしています。
だけどみんな、おおかみが怖くて逃げてしまう……。
「け」あんなやつらこっちからごめんだ、と。
強がってうそぶくおおかみ。
ほんとはさみしいのにね……
「おれに にたこは いないかな」
どんなに探しても、おおかみの仲間は見あたりません。
「おれに にたこは いないんだ」
とうとう、おばけのいる墓場でしゃがみこんでしまいます。
さて、おおかみは仲間をみつけることができるのかな?
絵本『やっぱりおおかみ』の内容と感想
福音館書店「こどものとも傑作集」の1冊です。
孤独な子どもおおかみの仲間探しの物語。
主人公のおおかみは全編、真っくに描かれていて表情も見えません。
それがどこか悲しげで、哀愁を感じさせます。
他の動物たちはたくさんいるけど、みんなおおかみが怖いんですね。
「もしかして しかに なれたら あそこで たのしく あそぶのに」
そんな言葉からもおおかみの心情がみてとれます。
ひとりぼっちはさみしくて。
たのしそうなみんなが羨ましくて。
おおかみの口ぐせの「け」
これも強がりやさみしさの裏返しなんですよね。
「やっぱり おれは おおかみだもんな おおかみとして いきるしかないよ」
そうつぶやいて、赤い気球が空へ飛んでいく。
まるで、おおかみのなかの執着やこだわりが解けていくのを象徴しているよう。
最後の「け」は表情もわからないし、いつもと同じなんだけど。
それでもなぜだか、ふっ切れた清々しさのようなものを感じさせてくれます。
おおかみの気持ちに共感したり、なんだかいろいろ考えさせられる1冊。
子どもも大人も、年齢を問わずに楽しめる素敵な絵本です。
自分を受け入れる
いつも楽しそうな人たちをうらやましく思ったり。
今の自分の状況に不満を抱いていたり。
ぼくたちはつい、自分と違う存在にあこがれてしまいます。
仲間がほしくて「しかになれたら」と考えたおおかみも。
きっと、ひとりぼっちの自分を変えたかった。
違う誰かにあこがれて。
ダメな自分が嫌になって。
「自分を変えたい」
よくそんな言葉を耳にしますよね。
だけどね、それは違う自分になることじゃなくて。
今の自分を否定することでもないんです。
ぼくたちは違う誰かにはなれないから。
他人の人生は生きられないから。
人それぞれ持って生まれたものや違いがあります。
それが「自分らしさ」や「その人らしさ」になる。
みんな違っていていいんです。
無理に違う自分になんてなろうとしなくていい。
誰かと比べて、今の自分を否定したりしなくていい。
おおかみだって「自分がおおかみであること」を受け入れました。
だからこそ前向きな気持ちで歩きだせたんです。
自分であることを受け入れること。
たとえどんな自分であっても認めること。
それができれば生きることが少し楽になるはずだから。
以上、自分を受け入れる成長の物語 ちょっぴり切ない絵本『やっぱりおおかみ』のご紹介でした。
おしまい。
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