出典:ふるた たるひ,たばた せいいち『おしいれのぼうけん』/童心社
みなさん、こんにちは。
絵本ソムリエのニコパパです。
今日は、絵本『おしいれのぼうけん』のご紹介です。
「まっ暗なおしいれ」
「ねずみばあさん」
そんな小さな子どもにとってこわーいものがセットになった1冊。
実際に保育園を取材してまわり、子どもたちの生の声から誕生した作品です。
ただ怖いだけでなく、子どもたちの成長を描いたハラハラドキドキの冒険物語。
40年以上にも渡って支持されるロングセラー。
発行部数が200万部を超える大人気の絵本です。
絵本『おしいれのぼうけん』の情報
『おしいれのぼうけん』のあらすじ
さくらんぼ保育園にはこわいものが2つあります。
ひとつは「押し入れ」で。
もうひとつは「ねずみばあさん」です。
「押し入れ」は、先生の言うことをきかないと閉じ込められてしまいます。
「ごめんなさい」と言うまで出してもらえません。
「ねずみばあさんは」は先生たちはやる人形劇にでてきます。
その気味の悪い声に、子どもたちは「きゃー」と耳をふさぎます。
ある日、お昼寝の時間におもちゃの取り合いでケンカになった、あきらとさとし。
2人は、みずの先生に叱られて反省のため真っ暗な「おしいれ」に入れられてしまいます。
「ごめんなさい」となかなか謝ろうとしない2人。
すると壁の暗闇の中から、ねずみばあさんがたくさんのネズミたちを引き連れて現れました。
いつのまにか押し入れは、別の世界に続くトンネルに変わってしまう。
「あーくん。てだ、てを つなごう」
2人は手をつなぎ、おしいれの冒険へと旅立ちます。
迫りくるねずみばあさんから必死に逃げる、あきらとさとし。
トンネルを抜け、無人の高速道路を走り、くさい下水道の中を流され。
2人は無事に、ねずみばあさんから逃れることができるのでしょうか……?
絵本『おしいれのぼうけん』の内容と感想
子どもを押し入れの上下に入れた話。
人形劇のねずみばあさん
保育園へのヒアリングを通して、子どもたちのリアルな声から生まれた絵本。
それだけに妙に生々しくて、物語の中にスッと入っていけますね。
絵のほとんどが鉛筆で描かれているのも特徴的。
押し入れの闇に怪しく光る真っ赤な目。
ライトをつけて走りだすミニカーとデゴイチなど。
要所で挟まれるカラーページが、鉛筆のモノクロイラストと対照的で印象に残ります。
子ども向けとしては長い80ページもある大長編。
物語のなかで先生の成長もきちんと描いているのもみどころです。
最初のページで、保育園の入り口に貼られていた「あそびに入らないでください」という貼り紙。
それが最後のページではなくなっているのもポイントですよ。
これは作者である田畑さんの「保育園では子どもに思いっきり遊んでほしい」という願いを込めたのだそうです。
発行部数は223万部のダブルミリオンセラー作品*1。
友情や、子どものしつけについても考えさせられる1冊。
40年以上にも渡って支持される大人気の絵本です。
受賞歴
・第1回 ようちえん絵本大賞 準大賞
思い出に残る「1冊」
『おしいれのぼうけん』は、ぼくにとって思い入れのある絵本のひとつ。
ぼくが子どものころに通っていた保育園では、年長さんになるとお泊り保育があって。
夜にみんなで集まって『おしいれのぼうけん」を読んだあとに、2人1組で順番に保育園の裏道を肝だめし。
ねずみ婆さんに扮した先生から首飾りをもらって帰ってくるというイベントをやっていました。
やんちゃな子どもだったぼくは、格好つけてはいるけど内心ではビクビクで。
怖さをみんなに悟られないように、無理して強がっていたの今でも覚えています。
だからかな、ぼくにとって『おしいれのぼうけん』は怖さの象徴みたいなところがあって。
トラウマなんていうと大げさなんだけど、子どものときの記憶って強烈だったりするんですよね。
あまり読み返す機会もなくて、なんとなく手にとる機会もなかったりして。
だけど大人になってから改めて読んでみると、昔とはまたぜんぜん違った見え方がしてくるから不思議です。
まあ、それは『おしいれのぼうけん』に限ったことでもないんだけど。
とくにその気持ちが大きかった作品なんですよね。
この絵本に出会えたからこそ、子どものころに出会った他の絵本も読み返してみようと思えたし。
大人になったからこその、感じ方やとらえ方できるようになりました。
幼いころの懐かしい気持ちであったり、絵本の楽しさを思い出させてくれたり。
ぼくにとって、そんな思い出深い大切な1冊。
当時は怖い思いもしたけど、保育園の先生たちには感謝です!。
ぼくも絵本ソムリエとしてひとりでも多くの人に、思い出に残る「1冊」届けていきたいな。
以上、ねずみばあさんなんて怖くない!勇気と友情の冒険物語『おしいれのぼうけん』のご紹介でした。
おしまい。
*1:トーハン「ミリオンぶっく2018年版」のデータを元に記載しています。
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