出典:レオ・レオニ『フレデリック』/好学社
みなさん、こんにちは。
絵本ソムリエのニコパパです。
今日は、絵本『フレデリック―ちょっとかわったのねずみのはなし』のご紹介です。
冬に備えてせっせと働くねずみたち。
その中にいる、ちょっと変わったねずみのお話。
「違い」は間違いではないし。
「みんなと同じ」が正解でもない。
まるでそんなことを、野ねずみたちが教えてくれているよう。
みどころたくさん、おすすめの絵本。
チャーミングなフレデリックの活躍に乞うご期待です。
絵本『フレデリック』の情報
『フレデリック』のあらすじ
石垣のなかにおしゃべりな野ねずみの家がありました。
そこで暮らす5匹の野ねずみたちは冬に備えて大忙し。
とうもろこし、木のみに小麦、それにワラ集めにみんな昼も夜も働いた。
ただ……フレデリックだけは、別。
働かないフレデリックにどうしてなのかたずねると。
「さむくて くらい ふゆの ひの ために、ぼくは おひさまの ひかりを あつめているんだ」
また、座りこんでいるフレデリックに何をしているのか聞いてみると。
「いろを あつめているのさ ふゆは はいいろだからね」
また、ある日、眠そうなフレデリックに少し腹を立てて
「ゆめでも みてるのかい フレデリック」
「ちがうよ ぼくは ことばを あつめてるんだ。ふゆは ながいから、はなしの たねも つきて しまうもの」
冬がきて隠れ家にこもった野ねずみたち。
だんだん食べ物もワラも減っていき、飢えと寒さでおしゃべりも少なくなって……
そのときみんな思い出してたずねました。
「きみが あつめた ものは いったい どう なったんだい、フレデリック」
そしてフレデリックが集めていたものを披露していくと……
絵本『フレデリック』の内容と感想
働き者の野ねずみたちと、じっとしたまま動かないフレデリック。
「みんなと同じようにやらないと」
「あいつだけ違うことをしているのはおかしい」
自分たちと違う存在を責めたり仲間はずれにしたり。
ついついそんなふうに考えてしまいがち。
たしかにズルをしたり、自分だけ楽をしようとするのは良くないのだけれど。
フレデリックは怠けていたのではなく、みんなと違う視点で仕事をしていただけ。
他とは違うやり方で冬に備えての準備を進めていただけ。
衣食住はとても大切だけど、それだけではきっと生きられない。
心を満たす「娯楽」が大切だったりするんです。
じっと我慢を強いられるような環境なら尚更。
だからこそフレデリックのような、はみ出し者も必要なんですよね。
他のネズミたちからの問いかけに「待ってました」と言わんばかりにさっそうとした登場。
みんなから褒められて、照れてはにかむフレデリック。
表紙の、花なんか持ってちょっと気どった顔も含めて、いちいちチャーミングでかわいらしい。
フレデリックに癒やされながら、いろいろなことを考えさせられる。
そんな素敵な、おすすめの絵本です。
受賞歴
・コールデコット賞
違っていていいんだよ
クラスにひとりぐらいいませんでした?
フレデリックみたいな子。
人と違う視点、みんなと違うものの見方。
ひとりだけ独特なセンスで物事をとらえたり、表現したりする。
ぼくは、そういう感性がなかったから憧れていたりして。
とても素敵なことだし、立派な個性だと思うのだけど。
とくに子どもの頃なんかは、集団から浮いてしまって嫌な思いも少なくなかったりするのかな。
誰だって仲間はずれは苦しいから。
笑われたり、否定されるのは嫌だがら。
正解がわからないから、とりあえず周りに合わせて。
はみ出さないように、間違えないように。
「みんなと同じようにやらなきゃ」
「普通にならなきゃ」
そんなふうに、自分の心に嘘をついて、本当の気持ちにフタをして。
きっとそうやって窮屈な思いをしている人って、案外多かったりする。
でもね、みんなと一緒が正解とはかぎらない。
ほんとうは「右へならえ」で同じである必要なんてないんですよね。
ぼくたちの国はとくに不寛容で。
「常識」や「普通」から外れると、すぐに排除しようとするから。
だけどね自分を偽る理由なんてないんです。
絵本のフレデリックのように、みんなで認めあって輝ける場面がある。
こわがらずに行きたい方に進めばいい。
「良い」か「悪い」かを決まるのは他人じゃないんだから。
自分も他人も、誰のことも比定せずに。
みんなが違うままで自由に生きられる。
そんな世の中になれば素敵だなあ、と思います。
だって、生き方に正解なんてないんだから。
「そういうわけさ」
以上、変わり者のチャーミングなねずみの話 おすすめ絵本『フレデリック』のご紹介でした。
おしまい。
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