夏のおわりの色褪せない記憶 切なくも美しいファンタジー絵本『ふたりのねこ』

出典:ヒグチユウコ『ふたりのねこ』/祥伝社

みなさん、こんにちは。
絵本ソムリエのニコパパです。

今日は、絵本『ふたりのねこ』のご紹介です。

ある夏のおわりの記憶。
猫のぬいぐるみと、野良猫の出会いと別れを描いた1冊。

心あたたまる、やさしい物語。
そして胸をしめつける、切ない読後感。

読む人の心の深い部分を、キュッとつかまえてしまうような、美しいファンタジー絵本です。

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絵本『ふたりのねこ』の情報

著者:ヒグチユウコ/作
出版社:祥伝社
出版年:2014年12月
ページ数:32ページ
対象年齢:6歳から

『ふたりのねこ』のあらすじ

ある日突然、ひとりぼっちになってしまった、猫のぬいぐるみ「ニャンコ」
そんな、ボロボロになって倒れていたニャンコをひろった、野良猫の「ねこ」

ニャンコは元いた、ぼっちゃんのところに帰りたいと望みます。
だけど帰り方がわからずに困ってしまう……
     
「そのおうち さがそうよ」
ねこがニャンコに言います。

「そう、いっしょに。だから あたしたち かぞくよ」

そうして家族になったふたりのねこは、ぼっちゃんを探しはじめます。
池のコイ、文鳥の夫婦、原っぱうさぎ、誰にきいても知りません。

どんなに歩き回って探してみても、何もみつからないまま。 

ぼっちゃんに捨てられたのではと、しだいに不安になるニャンコ。
それでも、宝物である首飾りをくれたぼっちゃんを信じたい……

ぼっちゃんがみつからないまま時間だけが過ぎていきます。
そしてすこしずつ、心の距離を縮めていくニャンコとねこ。

お互いがずっと一緒にいたいと思いほどに。

そんなある日、ねこが高熱をだして倒れてしまいます。
向こうからやってきた犬に必死で助けを求めるニャンコ。

大切にしていたアンモナイトの化石の首飾りを差しだしてまで……

出典:ヒグチユウコ『ふたりのねこ』/祥伝社

絵本『ふたりのねこ』の内容と感想

飼い主である「ぼっちゃん」とはぐれてしまった、猫のぬいぐるみ「ニャンコ」
そしてニャンコをひろった、公園に住む野良猫の女の子「ねこ」

ふたりの猫の、忘れられないひと夏の記憶。

最終的にニャンコは、ぼっちゃんの家に帰ることができて。
きっと、ねこも新しい家族のもとでしあわせに暮らしていて。

たぶんハッピーエンドなのだろうけど。
ふたりは離ればなれ……

それでもニャンコとねこの絆は変わらない。
それに家族だった事実は、いつまでも消えないままだから。

実はぼっちゃんと、ねこの新しい飼い主が知り合いで、いつかばったり再開……
なんて、ついそんな展開を想像したくなりますよね。

緻密に描き込まれた圧倒的画力。
つい絵本の世界に引き込まれてしまいます。

心の深いところに染み入るような、切なくも、なんだかあたたかな読後感の1冊です。

もともとはバッグの付録として発売された絵本。
それが好評だったため、新たに表紙を描き下ろし、新装版絵本として出版されました。

ちなみにニャンコは著者であるヒグチユウコさんの息子くんが大事にしている猫のぬいぐるみがモデルだそうですよ。

在りし日の思い出、遠くの誰か思う気持ち。
そんな心に寄り添うような、心あたたまるファンタジー絵本です。

出典:ヒグチユウコ『ふたりのねこ』/祥伝社

出会い、そして別れ

「出会い」と「別れ」ってワンセットみたいなもので。
出会いがあれば、そのあとには必ず別れがあるものなんですよね。

絵本のなかの、ニャンコとねこのようにさ。

別れって悲しいことだし、歓迎したいことではないだけど。
だからって、出会い自体を否定したりするのはちょっと違うのかな。

別れは必ず訪れるものなんだけれど、その出会いに意味がなかったわけではなくて。

ニャンコとねこの家族であった思いが残るように。
それは成長していくために必要な過程であったりもする。

別れがあるからこそ、限りがあるからこそ、しっかりと捕まえておきたくて。
そんな、はかないものだからこそ、そこに魅力を感じてしまうのだろうか。

なんだか、生きることに少し似ているのかもしれないね。
まるで必ず死ぬのに生まれて生きる、ぼくたちみたいだ。

ほんと、ぼくたちが生まれて出会うことが奇跡みたいなものだから。
すべての出会い、すべての瞬間が一期一会。

どこにも、当たり前なんてないんですよね。

だからこそ今ある出会いを大切にしたい。
一つひとつの繋がりを大事にしたい。

かけがえのないものだから。
後悔したくはないから。

いつか別れる、その日まで。

以上、夏のおわりの色褪せない記憶 切なくも美しいファンタジー絵本『ふたりのねこ』のご紹介でした。

おしまい。

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