本物になりたかった人形の物語 切なく美しい名作絵本『ビロードのうさぎ』

出典:マージェリィ・W・ビアンコ,酒井 駒子『ビロードのうさぎ』/ブロンズ新社

みなさん、こんにちは。
絵本ソムリエのニコパパです。

今日は、絵本『ビロードのうさぎ』のご紹介です。

男の子の「本当の友だち」になることを、願いつづけたビロードのうさぎのお話。
名作『The Velveteen Rabbit』が新たに生まれかわりました。

男の子の「本物」になりたくて。
自分の「本物」に自信が持てなくて。

そんなビロードうさぎに「こども部屋の魔法」が奇跡をおこします……
いつまでも心に居座るつづけるような、切なく胸にひびく1冊です。

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絵本『ビロードのうさぎ』の情報

原題:The Velveteen Rabbit
著者:マージェリィ・W・ビアンコ/作 酒井 駒子/絵・訳
出版社:ブロンズ新社
出版年:2007年4月
ページ数:36ページ
対象年齢:5歳から

『ビロードのうさぎ』のあらすじ

クリスマスの日、男の子にプレゼントされた、ビロードのうさぎのぬいぐるみ。
他のおもちゃたちと一緒に、子ども部屋で暮らすことになりました。

ある日、子ども部屋の住人の中でも、一番古くてかしこいウマが教えてくれました。

おもちゃたちの願い。
それは、心から大切に想われ、子どもの「本当の友だち」になることだと。

そして、男の子のお気に入りになったうさぎ。
毎晩一緒に寝むり、いつも一緒に遊びました。

汚れてぼろぼろになっても、うさぎは幸せだった。
それは「こども部屋の魔法」で、男の子の「本当のうさぎ」になったと信じていたから。

男の子と過ごす時間の中で、自分が「本物」であることを実感しながら、日々を送っていたビロードうさぎ。

ところが別れは突然やってきました。
男の子が感染性の病気を患い、身のまわりにあるもの全てを処分することに。

悲しみにくれるビロードうさぎが涙を流したとき、奇跡がおこります……

出典:マージェリィ・W・ビアンコ,酒井 駒子『ビロードのうさぎ』/ブロンズ新社

絵本『ビロードのうさぎ』の内容と感想

ぼうやの「本当の友だち」になることを夢見たビロードのうさぎの物語。

1922年に発表された古典的ロングセラー『The Velveteen Rabbit』
その名作が、酒井駒子さんの繊細な絵と抄訳でよみがえります。

子どもたちにとって、長い時間を過ごしたオモチャは、オモチャではなく友だちなんですよね。

絵本の男の子にとっても「本物のうさぎ」だったし「本物の友だち」だった。
そしてそれは、ビロードうさぎにとっても同じこと。

だからこそ男の子との別れが悲しかった。
こんな終わり方に納得ができなかった。

ビロードうさぎの心境をを思うと、胸が苦しくなりますね。

「あの人の本物になりたい」
「自分に自信が持てない」

そんなふうに、人はどこかで「本物」になりたいと願っているもの。
誰かの「特別」でありたいと思ってしまうもの。

そしてそれが、別れの痛みを強くしてしまったりもして……

「本物って何だろう……」
そんなことを考えさせられる、魅力のある1冊。

心に響く、美しくも切ない名作絵本。
ぜひ、大人にも子どもにも1度は読んでほしい作品です。

出典:マージェリィ・W・ビアンコ,酒井 駒子『ビロードのうさぎ』/ブロンズ新社

「本物」って何なんだろう

本物の友だち。
本物の家族。

僕たちは、そんな「本物」という言葉につい惹かれてしまいます。
だけどさ、「本物」って何なんだろうね。

「本物」か「偽物」か。
「正解」か「不正解」か。

いったい誰が決めるんだろう。
もっといろんな形があっていいんじゃないかな。

ぜったいに「こう」と決めつけて、それ以外を認められないなんてつまらないよ。

「みんなが言っているから」
「普通はそんなことしないから」

まわりの人たちや、世間が何を思うかは関係なくて。
大事なことは、他人ではなくて自分がどう感じるか。

人の意見や、どう見られるかばかりに縛られていたら息苦しいだけだよね。

ぼくの思う「本物」があってもいい。
あなたの思う「本物」があってもいい。

そのどちらも間違いじゃないんだよ。
人形のうさぎが友だちだって、何もおかしくはないんだ。

自分の生き方を決めるのは自分自身なんだから
信じる道を生きた、ビロードのうさぎみたいにね。

以上、「本物」になりたかった人形の物語 切なく美しい名作絵本『ビロードのうさぎ』のご紹介でした。

おしまい。

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