絵本さんぽ

〜絵本ソムリエのおすすめ絵本紹介〜

「死」をユーモラスに描いた発想絵本第3弾『このあとどうしちゃおう』

絵本「このあとどうしちゃおう」の表紙

出典:ヨシタケシンスケ『このあとどうしちゃおう』/ブロンズ新社

みなさん、こんにちは。
絵本ソムリエのニコパパです。

今日は、絵本『このあとどうしちゃおう』のご紹介です。

ヨシタケシンスケさんの発想えほん第3弾!
今回はなんと「死」をテーマにした絵本です。

むずかしい題材ながら、独創的なアイディアと意表をつく展開は健在。
おじいちゃんが綴ったユーモラスなエンディングノートのお話です。

重くて悲しいテーマなのに、クスッと笑ってニヤニヤしながら読める1冊。
読み聞かせをとおして、家族で「死」について考えるきっかけあたえてくれます

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絵本『このあとどうしちゃおう』の情報

著者:ヨシタケシンスケ/作
出版社:ブロンズ新社
出版年:2016年4月
ページ数:32ページ
おすすめ対象年齢:小学校低学年大人
読み聞かせ:6歳から

『このあとどうしちゃおう』のあらすじ

こないだ、おじいちゃんが死んじゃった……

家族みんなで亡くなったおじいちゃんの部屋をお掃除。
すると男の子がベッドの下からノートをみつけます。

死んだおじいちゃんが書いた「このあと どうしちゃおう」ノート。
そこには「じぶんが しょうらい しんだら どうなりたいか」が書いてありました。

例えば「このあとのよてい」には、死んでからの予定がびっしり。
まずは「ゆうれいセンター」へ行って「てんごく」そして「うまれかわりセンター」へ。

天国に行くときの格好や、生まれ変わったらなりたいものなんかが、いっぱい書いてあります。

他にも、いてほしい神様、天国や地獄を想像したり。
つくってほしいお墓や、自分の記念品まで書いてあるんです。

おじいちゃんがこんなことを考えてたなんて……
ノートをみてると、なんだかおじいちゃん楽しそうに思えてきた男の子。

でも、もしかしたら逆だったのかもしれない。
死ぬのがこわかったから、楽しくなるように、このノートを書いたのかも……

「ほんとのところは おじいちゃんしか わかんないよねェ」
お父さんの言うとおり、おじいちゃんがどう思っていたのかは、もうわかりません。

自分なら、どんな「このあと どうしちゃおう」ノートを書くだろう。
男の子はさっそくノートを買いにでかけます。

さあ、ぼくだったらどうしちゃおうかな……?

絵本「このあとどうしちゃおう」の中身その1出典:ヨシタケシンスケ『このあとどうしちゃおう』/ブロンズ新社

絵本『このあとどうしちゃおう』の内容と感想

亡くなったおじいちゃんが残した「このあと どうしちゃおう」ノート。
その風変わりなエンディングノートをとおして「死」を、そして「生きる」ことを考えさせられる内容です。

この絵本はヨシタケシンスケさんが、ずっと書きたかったテーマなんだそう。

なにかと避けられがちな話題だけど、もっとカジュアルに「死」について話せる機会があったら……
そんな思いでつくられた作品です。

そしてその狙いどおり、重くて悲しい題材を描きながらも、とってもユーモラスで楽しい絵本。
クスッと笑って、読み終えるころには胸がジーンとあたたかくなるような1冊です。

とにかく、おじいちゃんの「このあと どうしちゃおう」ノートがとってもすてき!

「てんごくにいくときのかっこう」は、まるで遠足か山登りにでも行くつもりみたい。
空をとべるのに、しっかり歩きなれたくつをはいているし……

歳を重ねたからこそ「うまれかわったらなりたいもの」だって、たくさんあるんです。

ピザ屋さんや宇宙飛行士は、憧れていたのかなって思うんだけど。
トートバッグとコーヒーミルは……何でだろう……

このノートをみるかぎり、きっと生前から茶目っ気たっぷりなおじいちゃんだったんだろうな。

そんなおじいちゃんだから、もしかしたらほんとうに生まれ変わったりしてね。
近くにいて、ひっそりと見守ってくれているのかも……?

死ぬのが楽しみだったの? こわかったの?

で、結局どっちだったんだろう……?
おじいちゃんは、どんな思いで「このあと どうしちゃおう」ノートを書いたんだろう。

個人的には、やっぱりこわかったんだと思う。

大勢のお客さんがいるカフェで、おじいちゃんがポツンとひとり座っているシーン。
すごく印象的で、おじいちゃんの気持ちを表しているみたいだったから。

おじいちゃんは死ぬことが誰よりも怖かったんだろうな。
だからこそ「死」を、陽気なものとしてとらえたかったんじゃないのかな。

まあ、ほんとのとこはどうかわからないけど……
たださ、残された立場としては、楽しみにしてくれていたほうが安心できますよね。

絵本の付属に小冊子『SPECIAL BOOKLET』のおまけ付き。
ヨシタケシンスケさんへのインタビューと「そのあと こうしちゃう」という描き下ろし4コママンガが収録されています。

また『What Happens Next? 』というタイトルで英語版も出版されていますよ。

受賞歴

  • 第51回 新風賞 受賞
  • 第9回 MOE絵本屋さん大賞 第2位
  • 第5回 静岡書店大賞児童書新作部門 第2位
  • とっとり秋の読書大賞2016
  • 小学生がえらぶ! “こどもの本”総選挙 第7位

続編・シリーズ作品
【「発想えほん」シリーズ】

  1. りんごかもしれない(2013年4月)
  2. ぼくのニセモノをつくるには(2014年9月)
  3. このあとどうしちゃおう(2016年4月)
絵本「このあとどうしちゃおう」の中身その2出典:ヨシタケシンスケ『このあとどうしちゃおう』/ブロンズ新社

いきているあいだは どうしちゃおう

まだ幼い男の子には「死」についてピンとこないかな。
死んでからのことって言われても、なかなかむずかしいよね。

逆にやりたいことがいっぱいあることに気がついちゃう。

だけどそれは、ぼく自身だっておなじかな。
正直、まだどこか遠い感じがして……

だから「このあと どうしちゃおう」ノートは、もう少し先の話かな気がするな。
それよりも「いきているあいだは どうしちゃおう」ノートのほうが筆が進みそう。

「もっと家族といろんなところにお出かけしたい」
「まだまだ読みたい絵本だってたくさんある」

生きているあいだにやりたいことのほうが多いんだもん。

でもさ、人生のエンディングを意識することでみえてくることもあるんですよね。
「死」に向き合うことは、今ある「生」に向き合うことでもあるから。

今のうちに、もっといろいろ話しておかないと。
大切な人にきちんと言葉にしておかないと。

いつでも伝えられるわけじゃないからね。
「今」が、いつまでも続くわけじゃないんだからさ。

以上、「死」をユーモラスに描いた発想絵本第3弾『このあとどうしちゃおう』のご紹介でした。

おしまい。

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